サルベージというカルチャー

サルベージというカルチャー

こんにちは、ローコストロンドン留学の井ノ口です。

イギリス人はリノベーションの天才という記事でも書きましたが、イギリスには”サルベージ”というカルチャーがあります。ロンドンで暮らすまでこの単語自体知らなかったのですが、すごく良いカルチャーだなあと思います。

サルベージとは”救い出す”という意味で、取り壊しされる家で使われていた扉、床板などの素材を再利用する意味でも使われます。

日本では家を買った瞬間に価値が下がりますが、イギリスでは古いほど価値が上がります。だから割と若い人が家を買って、住み替えることがあります。もちろん新築なんかじゃありません。中古で買うのです。それを少しずつ自分たちで手を入れながら、DIYでちょっとずつリノベーションしながら住むのです。それは楽しいことですし、結果的に家の価値が上がるので資産になります。もちろん何も考えずにただリノベーションすれば良いというわけではありません。家の古さや雰囲気に合うようにリノベーションします。例えば、築70年の家だとしたら、その家に合う素材、質感の扉を使うのです。どこかの家で使われていた、使い古された木の扉。これを買って家に設置するのです。

そのためにイギリスには”サルベージショップ”と呼ばれるお店があります。ここで、解体される家などから引き取られた扉、床板、照明など様々なパーツが手に入ります。ここで自分の家の雰囲気に合う素材を買うのです。”アンティーク風””ヴィンテージ風”じゃなくて、本当にその時代の素材のものを買うのです。だから古い家にも違和感なく調和するし、それによって家の価値が上がります。自分たちが気持ちよく住むためにリノベーションし、それが資産価値になるので、将来その家を売って、住み替えをすることができます。子供が生まれて狭くなってしまったり、子育てのために郊外に引っ越したいと思った時などに。サルベージショップのスタッフは家が解体される際に扉や床板などを”救い出す”のです。そして必要な人に売るのです。

この文化はとても素晴らしいと感じます。スクラップ&ビルドの日本を見ていると悲しくなることがあります。「なぜ壊す?こんなに良い雰囲気の建物なのに」と感じることが多々あります。原宿駅の駅舎もそうですし、少し前なら代官山の同潤会アパートとかもそうですね。

本来日本も古いものを大切にする文化があったはずです。でもここ数十年の間で、すっかり失われてしまったのでしょうか?今でこそリノベーションという言葉が市民権を得てきましたが、まだまだイギリス人のそれには及びません。日本にももっとサルベージショップが増えて欲しいですね。”本物の素材”でリノベーションしたい人はいるはずです。僕みたいに。


札幌で数年前に某幼稚園の園舎の建て替えがありました。とても雰囲気のある建物だったのですが。。。ある日自転車で前を通りかかったら、すでに解体された後で。重機でバキバキに破壊された何十年も使い古された、いい味出まくりの床板が雨ざらしにされていました。その時に悲しさと言ったら。。Speechless。

「なぜ言わない。。。なぜ俺に。。。その床板欲しかったのに!」

と3分ほど呆然と立ち尽くしました。まあ、解体業者が僕に言う筋合いもないわけですが(笑)、取り壊しを知っていたら絶対にもらいに行っていましたね、あの床材。うちのマンションの床に敷き詰めたかった。良い雰囲気になるのは間違いない。

実は札幌に来る前、東京で築60年のマンションを買ってリノベーションしたことがあります。壁や天井をぶち抜いたりしてかなり大掛かりにリノベーションしたので1,000万円くらいかかったのですが、この時、廃材の処分だけでトラック2台、数十万かかりました。だから、使わない廃材を持って行ってくれることはありがたい話のはずなんです。処分代が安くなる可能性があるから。

それが欲しい人には届かず、所有者は処分代がかさむ。誰もハッピーじゃないんですよ。だからサルベージショップです。家を取り壊す前にサルベージショップが使えそうなものを買い取る(もしくは無料で引き取る)。それを欲しい人が買う。この仕組みができれば、時代を経て自然とエイジングされた”素材”が誰かの家で再利用され、かつゴミも減るのです。レストラン、Bar、服屋、美容室などのお店はもちろん、個人でも欲しい人はいくらでもいるはずです。必要な人の元に届く仕組みが求められています。

なんか書いてて僕がサルベージショップやった方がいいんじゃないの?という気がしてきました(笑)

いずれにしてもイギリスのサルベージという文化はとても素晴らしいので、これは日本も学ぶべきだと思います。イギリス、ロンドンに留学する際には是非サルベージショップに足を伸ばしてみてください。

扉とか欲しくなっても知らないけどね!(笑)

井ノ口

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